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前文 呼称 仕組み 死者 歴史 記事 アン 解析 取材 後記
警告:以下に書いてあることを実行して、如何なる損害を受けたとしても責任は負いかねます。
★プロローグ
西暦2002年11月頃、日本国内で突如流行った「失神遊び」
各地の小中学校では、子供たちがこの遊びを実行し、けが人を多く出した。
中には学校が注意を呼びかけ、禁止するところもあった。
かの有名なごるすら氏もこの危険な遊びに手を出していたという。
時々思い出される、失神遊び。その実態に迫ってみよう。
★呼称
「失神遊び」「失神ゲーム」「気絶ごっこ」などさまざま。
★仕組み
肺には、圧受容体という圧力を感じるセンサーがついています。
胸郭に圧がかかって、パンパンになりすぎると、脈拍はグーンと落ちてしまいます。
なぜそういう反応があるのかはよくわかりませんが、たとえばスキューバダイビングで
水中に潜り胸郭に圧力がかかると、脈が落ちてきます。
この反応をヘーリング・ブロイヤー反射と言います。

子どもたちがやって問題になった危険な「失神遊び」もこの原理です。
スーッと息を吸った瞬間に胸をパンと押すと、胸に圧がかかり、
肺の圧受容体が興奮して、心臓に「動くな!」という命令を与えます。
そのために、心臓が止まり、に血液がいかなくなって意識がなくなってしまうのです。
脳は七秒間血流がこないと、休止してしまいます。
肺というのは、単にガス交換しているだけのマシンのように思われていますが、
心臓に対して「止まれ!」と言う大きな権限を持っているのです。
その点では、「心臓は働き者で偉い」けれども、「心臓よりも肺のほうが偉い」と言うこともできます。

南淵明宏『心臓は語る」PHP新書2003年
★ルール夢の鎖と雪より
  1. 教室のなるべく目立たないところに2人以上で集まる。(多すぎてはダメ
  2. 気絶する人は壁に背中をくっつけ、
    気絶させる人は気絶する人の目の前に立ち、気絶する人に対する恨みを思い出す。
  3. 気絶する人はおもいっきり息を止め、
    気絶させる人は恨みを込めて、気絶する人の胸(心臓のあたり)をおもいっきり押す。
  4. 気絶する人はどんなに苦しくても絶対に息をしない
  5. 気絶させる人は相手がどんな親友でも絶対に手を抜かない。
  6. 気絶させる人は相手がちゃんと気絶したら、優しく起こしてあげる。
  7. 気絶させられた人は気絶させた人を決して殴ってはならない。
★死者
日本では死者は出ていないようだが、
海外ではイギリスやフランス、アメリカで死者が出ている。
★歴史
60年頃に、愛知県では見聞きされ、
80年頃には、都内で流行した。
90年頃は北海道釧路市で、
98年には再び愛知県で。
そして2002年になり再び流行が再燃。
★記事
 東京都練馬区の区立小学校で、下校途中の児童らが胸部を圧迫して気絶させる「失神遊び」を行い、
転倒した5年生男児(10)が転倒し歯が抜けるなどのけがをしていたことが19日、わかった。
相手を瞬間的に気絶させる失神遊びは10年以上前から、中学生を中心に各地でしばしば流行してきたが、
専門家は「命にかかわる可能性もあり、絶対にやめるべきだ」と警告している。 (読売新聞)02.11.20


「失神ゲーム」、小中学生に流行 欧米では死者も

「失神ゲーム」と呼ばれる危険な遊びが、子どもたちの間で流行している。
胸などを強く圧迫してもらい、意識が薄れる感覚を楽しむというものだ。
東京都内では小学生がけがをしたことがわかって問題化し、教育委員会も注意を呼びかけた。
欧米ではすでに死者も出ている。

東京都練馬区で今月中旬、小学5年生の男子(11)が初めての失神ゲームで大けがをした。
下校途中に友だちから「試してみたいことがある」と誘われた。言われるままの格好をして胸を強く押された。
すると、一瞬のうちにその場で気を失って顔を地面にぶつけた。あごを打ち、歯が4本抜けたという。
驚いた母親(41)の通報を受けて学校側が調査したところ、近隣の中学校の生徒らから
面白い遊び」として小学生に伝えられ、一部に広まっていたことが分かった。
このため、区教委は20日、「生死にかかわる危険性がある」として
注意と指導を呼びかける通知を区内の全小中学校に送った。

事故は今回が初めてではない。91年、北海道釧路市で、
胸を押さえることで「幻が見える」と中学生の間で広まり、失神して通院した女子生徒もいた。
同じ年、福島県内で中学1年の男子生徒(当時12)が体育の授業中に倒れて死亡したことをめぐって
両親が「失神ゲームで同級生に首を絞められた」と市を訴えたこともある。
名古屋市では98年、中学2年の男子生徒が失神して倒れ、前歯を折った。
同市教委の担当者(53)によると、市内の3校で流行しており、
禁止するよう各校に指導したらやがて静まったという。
「口コミで伝わっては消える。そうした繰り返しのようだ」と話す。

教育関係者らによると、都内の中学校では20年余り前にも同じ遊びがはやったことがあり、
愛知県では40年ほど前にも見聞きしたことがあるという。

海外でも社会問題化している。
英国では、王族も通う名門校で約3年前、15歳の少年が「気絶遊び」をしていて急死した。
遊びは、この少年が「すごい快感が味わえる」と仲間に広め始めたという。
仏では00年までの5年間に少なくとも子ども10人が死亡している。
米国でも今年4月、14歳の少女がこうした遊びで亡くなって騒ぎになったという。 02/11/24(asahi.com)
★赤毛のアン
赤毛のアン」のアンとダイアナも気絶にあこがれていたようだ。
細かい内容は書いていないが、「気絶は素敵なものね」という描写が出てくる。
★識者の解析こちら
先日も練馬区の小学6年生が一緒に下校していた小学5年の児童に
失神遊びをしないかと持ちかけ、胸を圧迫したところ、
気絶した拍子に顔面から地面に落ちて歯を折るケガをしたとか。
てゆーか、これは失神遊びではないだろう。
失神遊びをネタにしたただのイジメ
最近、学校でトラブルがあるとすぐいじめを疑う短絡思考な関係者も多いが、
この場合は状況証拠的にいじめの要因が高そうな気がする。
そもそも失神遊びは「自分が失神して快感を得ること」を
目的とした行為であり他人に強制してすることではない。
小6が「やってくれ」と小5に頼んで自分の胸を突いてもらったのならわかるが、
やろうぜ」と相手の胸を突くのは不自然である。
それに、大抵は失神した子が倒れないよう、隣に支える役が付き添い、
計3人以上が1セット(押す役、気絶役、支え役)となるのが基本らしいので、
一応子どもの頭でも、「倒れると危険だから支えよう」という安全管理は出来ているようだ。
今回のように転倒させてしまうのは、やった側にその考えが無かったことでもある。
よって、上級生が下級生をいじめる手段として失神遊びを利用したのだろう
(新聞を読んだ限りの推測だが)。
まあ、本当に安全管理の出来ている子どもは失神遊び自体をやらないが・・

失神遊びは気絶ごっことも呼ばれ、比較的昔からあるようだ。
10年前にも流行したとか、古くでは愛知で40年前に発生とか、情報が多数存在している。
情報ソースが同時多発的で錯綜しているのは、これが一種のサブカルチャーに属するものだからともいえる。
人面犬だとか、こっくりさんとか、小・中学校の文化は深いネットワークを有している。
もしこういう「学校内の児童及び生徒文化」を専門に研究している人がいたとすれば、
今回の事件も違った角度から切り込んでくれるかもしれない。
★ごるすら氏インタビュー
失神遊びをしたことはありますか?
あります。たいしたことはありません。
どんな気分になるのですか?
頭がぐるぐるして意識がなくなるだけです。
高いところにいってめまいがするのと変わらないと思いますよ。
気絶している時間はどれくらい?
5秒ぐらい。失神してた人には結構長く感じます。
危険はありませんか?
死なないように、やる前に深呼吸するから大丈夫。一瞬だから死なないですし。
気絶したらすぐ安静にするから問題ありません。
気絶して誰も支えないとけが人が出ますが、それ以外は問題ないですよ。
痛くはないですか?
別になんでもないです。たぶん普通に寝てるのと大して変わりません。
初めてタバコすって気を失うのと大して変わらないかと思います。
タバコとかすってるやつには効きにくいかと。
失敗したりしませんか?
自分が気絶しようと思わなきゃ絶対に気絶しません。
意識的に操作できるレベルのことだからたいしたことにはなりません。
だからやりたくないやつにはできません。
いま思えばどうですか?
心臓が止まっていたらしいですね。怖いです。
気絶させるほうも怖いですね。させるのはしたことないですけど。
死者が出てることについては?
怖いですね。でも死ぬ確率は0.1%くらいだから大丈夫でしょう。
日本ではあれだけやっても亡くなったのは一人しかいないようですし。
最後に?
あのような危険な遊びはぜひやめてもらいたいですね。
交通事故で死ぬぐらいの確立で危険みたいですし。
★最後に
ここまで延々と、失神遊びに関する情報を記載してきたわけだが、
これを読んだ貴方に一言だけ言いたい。

「よいこは真似しないでね♪」
★感謝
参考文献
「仕組み」南淵明宏『心臓は語る」PHP新書2003年
「ルール」テキスト系サイト「夢の鎖と雪」
「記事」読売新聞、asahi.com
「識者の解析」三国志サイト「蜀人気質」

インタビュー協力(無断)
ごるすら氏

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その他の文章はgotchanに著作権は帰属します。転載は禁じます。 2004/6/13
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